2020年は前半戦に「シマノネッサリミテッドS1010M+|SHIMANO NESSA LIMITED S1010M+」を使い込んでみたのでインプレッションを綴りたいと思います。
サーフの時を至福に変える
(中略)
ロッドを手にする、あらゆる瞬間において感動できる、サーフルアーロッド…
シマノショアルアーロッド史上初の新設計手法を導入。
(中略)
現場で求められるものを徹底追求することにより備わった高次元の実釣性能。
(中略)
引用:SHIMANO公式
と、いうことで2018年、SHIMANOからサーフゲームロッドの最高峰としてリリースされた本シリーズですが未だ人気は衰えず、サーフヒラメシーズンオフのこの時期(執筆は2021年1月)に購入を検討されている方も多いと思います。
がしかし、メーカー表記価格で「79,000円〜82,000円」と値段も最高峰なため、果たしてそこまでの価値はあるの?どんだけ良いの?と悩みの種は尽きないことでしょう。
そんなあなたの悩みを少しでも解消出来るよう、実際にぶっちゃけこのロッドはどうなのかプレゼンしたいと思います。
本記事の内容
サーフ最高峰ネッサリミテッドS1010M+は実際どんな使用感?
品番 | S1010M+ | |
全長(m) | 3.30 | ちょっと長い |
継数(本) | 3 | 持ち運びし易い |
仕舞寸法(㎝) | 115.0 | 同上 |
自重(g) | 179 | 昨今は普通 |
先径(㎜) | 2.1 | ちょい太めな竿 |
適合プラグウェイト(g) | 8〜42 | |
適合プジグウェイト(g) | MAX48 | |
適合ラインPE(号) | 0.8〜2.0 | |
リールシート位置(㎜) | 460 | 脇挟みスタイルには 丁度いい |
カーボン含有率(%) | 99.5 | |
本体価格(円) | 81,000 | 高い |
今回ご紹介するロッド「シマノネッサリミテッドS1010M+|SHIMANO NESSA LIMITED S1010M+」は全長「10ft10inch(3.30m)」の自重「179g」。昨今のサーフゲームロッドの中ではちょい長めで重さは普通の部類にあたります。
このロッドの売り文句である「奇跡のベストバランス」は、手に取るとすぐに「上質で軽っ」とそれを感じとることができます。
メーカー公式では「振り重り・持ち重り」だとか「f1値・f2値・f3値」だとかちょいと小難しい内容で説明されていますがもう少し砕いて分かりやすくお伝えすると、単純にロッドの重心位置が手元(リールシート周辺)に近く、従って、片手や脇挟みでロッドを保持した際に必要な力が少なくて済むので自重よりも軽く感じるというわけです。
しかし、その「上質で軽っ」の感じは、もう少し具体的に説明することができます。
ブランクスがかなりに肉薄に作られているこの並継3ピースは繋ぎ合わせて持ってみると、バットエンドからティップの先端までほとんどブレが無くシャキッとしており、ドライで硬質な質感と明瞭な空洞感が伝わってきます。
カーボンが凝縮されたガッチリ感とはちょっと違い、長めのロッドなどによくあるナヨナヨしたような感じは皆無で無駄なブレや振動はほとんどありません。
「雑味がない分、本来備わっているうまみを最大限感じとることができる」というのがこのロッドの特性です。
なので、「シマノショアルアーロッド史上初の新設計手法(※以下、新設計手法)」が先か、惜しげもなく投入した「フューチャー(技術特性・素材)(※以下、フューチャー)」が先かは分かりませんが、結果的に、誰しもが「上質で軽っ」と感じとることができる「奇跡のベストバランス」を創出しているのです。
では、実際にルアーをキャストした時はどうか。筆者がまず感じたことは「竿が勝手に投げる」感覚です。
通常キャスト時、「如何にロッドへルアーウェイトを乗せて曲げ込むか」を考え試行錯誤を繰り返すと思いますが、このロッドは竿を振っただけで最も簡単にそれを実現してしまいます。
「投げ竿の理想は並継3ピース」の理由は、キャスト動作に必要な役割を各部位ごとに特化させ設計することができる点にありますが、更に、3ピース各部位それぞれが高品質に作られたとしたら、当然、その分キャスト動作の精度や性能は向上します。
繰り返しになりますが、実践最優先を具現化した「新設計手法」と惜しげもなく投入された「フューチャー」のベストマッチングにより、結果的に各部位ごとの役割がアングラーのスキルに関わらず最大限発揮されやすく形成されていることもまた「奇跡のベストバランス」と言えます。
具体的にどのような感じかというと、手に持つ3番(バット部)を振り抜くことで、半ば自動的に2番(ベリー部)と1番(トップ部)がしっかりその役割を発動するといった感覚でしなります。
3番は実際に手で持っているのでその感覚はダイレクトに伝わってきますが、2番と1番の動きも驚くほど良く手に伝わり、一本の竿として機能していることが良く分かります。
3番の振り抜くパワーを2番が加速させ、1番はそれまでに蓄積されたパワーに安定感を増幅させ狙った先へルアーを放ちます。
キャスト時に発生した振動は各部位ではもちろんのこと竿全体での収束がかなり早く、ルアー射出後放出されて行くラインへの摩擦干渉を最小限に抑え、その飛行と軌道をサポートします。
というか、3本継ロッドなのに竿全体の振動収束が驚くほど早いこともこのロッドの特筆すべきところです。
話は戻りますが、例えば別記事で紹介したエクスセンスジェノスS100MHもとてもキャスタビリティーが高い竿ではあるものの、最大限そのポテンシャルを引き出してキャストしようとすると、2本継ということもありなかなかベストなキャストポイント(リリースポイントなど)が見つからなかったりします。
筆者が2019年シーズン使用していたダイワモアザンブランジーノ・エキスパートシリーズに関していうと、それがもっとピーキーだったりします。
皆様も「よし、うまくキャストできた!」と感じていても、思いのほか飛距離が伸びずルアーが失速して落ちるといった経験はありますよね?
ネッサリミテッドについてはそれが逆で、「あ、ミスった…」と感じていても、少ないインプット(入力)で3ピース各部位が作動するよううまく作られているため、思いのほかキャスティングがバシッと決まります。
つまりは、ある程度、それも結構テキトーにこの竿を振ることができれば、後は竿が勝手にキャスト運動をしてくれるといったところです。
少し論理的なことを言うと、「新設計手法」の「f1値:振り重り」と「f2:持ち重り」の数値が低いほどキャスト時のエネルギーとして増幅されるので、結果、自分で感じているよりも強く早くキャスティングしていることになり、その違和感が「竿が勝手に投げる」というキャストフィールを生み出しているのかなと筆者は考えています。
これだけ竿を手にした感じとキャスタビリティーが良い中で実際に魚を掛けた時はどうなのか、これは、思いの外パワーが強いです。
まず、「フィッシュ!」後、ウェイトが掛かるとかなり竿が曲がります。
バッド部から柔軟によく曲がってくれるので、魚の抵抗に対する追従性がとても良いです。
しかし、そこまでならよくある話だと思いますが、この竿の強みは、なんとそれでいて魚を寄せるパワーが半端ないということです。
事実、こちらの動画はサーフで釣れてしまうエイとしてはラージサイズでしたが、引っ掛かり所が良かったとはいえ、沖で掛かった奴を思いっきり引っ張って5分程度で上げてます。
ネッサリミテッドの寄せるパワーが無ければもっと時間が掛かっただろうし、途中で諦めてラインブレイクさせるかさせないか、腕をパンパンにさせながら悩むこととなっていたでしょう。
良く曲がる上にパワーが凄いということで、魚とのファイトを焦ることなく存分に楽しむことが出来る、そんな安心感が「サーフの時を至福に変える」所以です。
超ハイエンドロッドであるが故の短所
ここまでベタ褒めにベタ褒めしてきましたが、当然良くないところもあります。
シマノ公式に記してある「10ft超えなのに、9ft台のバランスを実現」については、比較対象で採用されている「S102M(全長3.10メートル、自重162g)」の話で、「S1010M+」については同等クラス群の中での「奇跡のベストバランス」ということになります。
群を抜いた「奇跡のベストバランス」ではあるものの、「10ft10inch(3.30m)」の長さはそれなりの長さ感による取り扱いにくさはあります。
特に一番気になるところはキャスト時で、重め(30g以上)から軽めのルアーに変えた時に少し気をつけないとエアノットが多発します。
キャスト時、ロッド動作が良すぎるが故にルアーの重量差によるキャストポイントが曖昧になりやすく、「10ft10inch(3.30m)」の竿の長さが悪さをしてラインが緩んだまま放出されてしまうことがあります。
筆者は特に15g前後のミノーと30g以上のシンキングペンシルを交互に多用するのですが、この特徴を把握して注意していてもエアノットが発生してしまいます。
少ないインプットでも竿が勝手にルアーを投げてしまうと感じるほど良く出来ているロッドですが、逆にアングラー側のインプットが大きくなればなる程それに対してもロッドが良く反応してしまいます。
キャスト時は、思い切り力を込めて振り抜こうとすると、却ってロッドがパワーを吸収してしまいまったく飛ばないことがあります。
では、それ以外でのインプットに対してはどうか。
例えばロッドを縦にジャークした際にも良く曲がるというか、曲がりすぎてしまうという方が表現が合っているかもしれません。
一見何もなく普通のことかと思いますが、通常のロッドより柔軟に大きく曲がってから復元するため、わずかながらアングラーのインプットと実際のルアーが動く間にタイムラグが発生します。
これはショアジギング寄りの釣り方、すなわちシャックってシャックってアクションを入れていくような釣法をする場合、それまでと同じような感覚では実際の動きと誤差があり“いつものようには釣れない”原因となりうる場合もあります。
筆者もリフト&フォールやワンピッチ・ツーピッチジャークなど多用するのですが、このタイムラグによる誤差に馴染むには結構苦労しました。
どうしたかたというと、インプットを強くし過ぎてしまうとロッドがよく反応し曲がってしまい、逆にパワーが吸収され相殺された状態でアウトプットしてしまうので、インプットに対してそのパワーをロッドがそのままアウトプットしてくれる加減を見つけてからはいつもと同じ感覚で使うことが出来るようになりました。
具体的には、それまでのインプットパワーを100とすると6〜7割程度の加減が一番素直にアウトプットしてくれます。
これはキャスタビリティーと似ているのですが、6〜7割程度の加減でアクションをインプットすることで、後は竿が勝手にルアーを動かしてくれるイメージです。
この竿の特性上、それでもやはりタイムラグが発生してしまうのですが、そこは慣れるしかありません。
何故にこのようなことが起きるかというと、特殊的なロッドの復元力にあります。
ラージサイズのエイでさえも最も簡単に引き上げてしまうパワーを持たせ、暴れる魚を十二分に否す柔軟性を持たすことを両立させるには元来技術的には難しく、前者を強くすれば曲がらなくなるし後者を良くすればパワー不足に陥るというのが慣例でした。
それぞれのロッドシリーズに何本も何本も横展開が派生しているのはそういった理由も含まれます。
しかし、このネッサリミテッドシリーズは基本的にそれらを両立させる仕様で作られているため復元力がとても強くなっているというか、まずしっかり曲がってから復元力がついてくるようなちょっと特殊な特性になっています。
ここでも竿全体の振動収束がとても早く、曲がってからサッとビタっと復元するように動くため、良くも悪くも余計にタイムラグのように感じてしまうのかもしれません。
ヒラメも50UPの良型クラスが掛かれば良いのですが、40UP、ソゲクラスになると明らかにロッドパワーが強く直ぐに魚が水面を割ってしまいます。
それもこれもロッドがかなり曲がってしまうので、ヒット!と思ってグイグイ竿を立てるとその分魚を寄せる力が増幅されます。
これは贅沢な悩みかもしれませんが、あまりサイズが良くない魚が掛かった場合はロッドパワーをセーブするように釣り上げないと手応えがないことがあります。
サーフ系ルアーのキャスタビリティーは?
サーフの至福と言うくらいサーフゲームに特化させたロッドですが、実際のところはその特性上、結構得意不得意の別れるロッドです。
「S1010M+」についてはプラグウェイトの上限が「42g」ジグウェイトの上限が「48g」ですが、正直これは結構ギリギリだと感じます。
竿の調子がM(Medium)クラスなのでルアーが重い分それだけロッドは曲がってしまうのですが、「JUMPRIZE 飛びキング 105HS 44g」「DUO BW ウェッジ 140S 40g」「HARDCORE モンスターショット 95S 40g」などはやや重さ負けするような感覚のキャスト感があります。
ヘビーウェイト級ルアー・ジグを多用する場合は「S104 MH」「S100MH」の方が良さそうです。
「DUO BW ウェッジ 120S 38g」「ima ヨイチ 99 バリスタ 36g」「DUO BW ウェッジ 95S 30g」「HARDCORE ヘビーショット 105S 30g」「ima ヨイチ 99 28g」「JUMPRIZE ぶっ飛び君 95S 27g」クラスは言わずもがなかなり気持ちよくキャストすることが出来き、このロッドの特性を十二分に発揮することができます。
ルアーウェイト上限の中間領域に位置する特にシンキングペンシルについては、開発者の好みも織り込まれているのか、それの特化型と言っても過言ではないくらい得意です。
しかし、重心移動ギミック(バネ系やマグネット系)が入ったミノーについては、ロッドがその反動を吸収してしまうのかやや投げにくい感覚があります。
「ima sasuke 120 裂波」などに見られる鉛やタングステンなどの通常の重心移動系についてはそこまで問題はありませんが、ロッドの長さ故にスイング速度が付けづらく投げにくさを感じることもあります。
繰り返しますが「S1010M+」はやはり竿が長いこともあり、軽めのルアーは投げにくいです。
抜群のキャスタビリティーを持ってはいるが、事実、ルアーが軽くなると重さを乗せてしなりを利用するのが結構難しいです。
軽めのルアーでフィネス寄りの釣りをしたい方には「S102M」が良いと思います。
適合ウェイト以内の鉄板バイブレーションならキャスタビリティーに問題はないのですが、巻いてきた時になかなかの気だるさを感じます。
なにせ竿がよく曲がって柔らかく反応するので、ただでさえ重さや抵抗感を感じる鉄板バイブレーションはかなりしんどくなります。
また、サーフゲームでは半ば飛び道具的に使われることの多い鉄板系はロッドアクションも多め大きめ激しめで、「S1010M+」の調子だと思うように操作することが難しくなります。
このロッドで鉄板系を使うのであれば30g以下の小ぶりな物をおすすめします。
まとめ|サーフの至福であることに間違いはないけど…
さー前半戦褒めに褒めまくって後半では使い込んでみて分かったネガティブ要素を書いてみました。
結論を綴りたいと思います。
使い込んでみた感じ、使えるルアーに得意不得意があったり性能が良すぎるだけにその扱いが若干難しかったりするわけですが、同等クラスのサーフロッドとしては間違いなく抜けてる代物であることは間違いありません。
ワンランク落とした「20ネッサエクスチューン」もありますが、ロッドの張りや復元力・キャスタビリティーや魚を掛けた時の安心安定感はリミテッドには敵いません。
同シリーズの「CI4」「BB」とはまったく別物と言えるほど品質が違います。
サーフヒラメゲームを楽しむ上で「持った瞬間」「キャストした瞬間」「ルアーを操作した瞬間」「ロッドを手にするあらゆる瞬間においての感動」、すなわち「サーフの時を至福に変える」唯一無二のロッドであることは間違いないので、ちょい高めではありますが、価格以上に至福を体感できる価値があると考えています。
今年か来年かその次かは分かりませんが、次のモデルチェンジに期待するアップデート内容としてはまずその「デザイン」を洗練させて欲しいというのが本音です。
ネイビー基調にしている辺りが若干おじんっぽいと感じたりするわけで、ここはもっと若者も取り込めるような圧倒的なクールさを持たせたスタイリッシュなデザインにしてほしいです。
例えば「NESSA LIMITED」のプリントなどは斜めフォントではなく、もっとすっきりさせたモダンフォントにして刻印するとか…。
リールシート上部に筆記体を使用していたり、プリントされているフォントだけで数種類と統一感が無かったりしてます。
そして大切なロッド性能については、これは日々技術が進歩して軽くなるなり強くなるなり勝手にアップデートされるので、強いて言えば「感度」の面では意識して改善させていくのが良いかと。
カーボンモノコックは確かに脇からの情報伝達はするのだけれど、もっと手元でそれを感じたいと思う方も多いのではないでしょうか。
ダイワのAGSガイドなんかは、手元からの情報伝達がきめ細やかでダイレクト感に優れてたりします。
チタンフレーム/トルザイトリングは感度に優れているというよりもラインの通りがよく、手元に伝わる感覚としては情報伝達というよりシルキーな巻き心地が優っています。
何にせよ、現状かなり完成度が高いネッサリミテッドシリーズですので、次のアップデートへの期待も高まるばかりですね。
と、いうことで「ネッサリミテッドS1010M+」について、かなり回りくどかったかもしれませんが筆者なりのインプレッションを書いてきました。
この記事やその他についてご質問・ご意見等ございました、本記事のコメント・お問い合わせページ「Contact」にてお寄せいただければと思います。
※S1010M+は在庫の確認が取れ次第リンクします。